死んでいった名もない人々 2010/12/14
今、『 沖縄 シュガーローフの戦い 』(ジェームス・H・ハラス著/猿渡青児 訳/光人社NF文庫 )という本を読んでいます。
沖縄戦・首里攻防戦における激戦地の1つ、シュガーローフ・ヒル ( 日本側呼称:五二高地 または 安里五二高地 ) をめぐる戦闘を米第6海兵師団の側から描いた戦記なのですが、実戦を体験した膨大な前線兵士達の証言・回想をちりばめながら構成されていることが本書の特徴です。
沖縄戦については過去に
『 沖縄決戦-高級参謀の手記 』( 八原博通 著 / 読売新聞社 / 1972年 ※現在絶版?)
『 沖縄 非遇の作戦 異端の参謀八原博通 』(稲垣武 著 / 光人社 / 1998年)
の2冊を読んだことがありますが、これらは沖縄守備第32軍司令部の動向を知る上での貴重な資料です。特に当時第32軍高級参謀として作戦指導の中枢にあった八原博通・元陸軍大佐の著書は沖縄戦における日本軍司令部側の実態をほぼ明らかにしているといってよいでしょう。
しかし、これはあくまで上級司令部の話であり、沖縄戦全体の一側面を照らしたに過ぎません。
最前線の現場ではいかなる戦闘が繰り広げられていたのか?
残念ながら日本側に詳しい資料は少ないようです。その意味でこの 『 沖縄 シュガーローフの戦い 』 は、ごく一端ではありますが前線状況を知るうえでの有効な著作のひとつとは言えるでしょう。
さて、この本を読み進んでゆきますと・・・
その凄惨な証言の数々に少しづつ気分が重くなってきます。しかしこれらは戦争現場の状況を伝える貴重な情報ですので幾つか引用してご紹介しましょう。
■ 『 彼に目をやった瞬間、迫撃砲弾の破片が飛び散って、伏せている兵士の腰の上の部分が、まるで斧で叩かれたように、ざっくりと切り裂かれてしまった。明け方のひんやりとした空気の中、ぞっとするような傷口からは湯気が上がっていた。』 ☆ 5月10日朝 / 第22海兵連隊第3大隊 / チャールズ・ピュー1等兵
■ 『 「お前ら、いい加減にしろよ」と叫ぼうとしたヒューストンの言葉は、銃弾が骨と肉を砕く音でさえぎられた。2人のうち、後ろの男は完全な宙返りをしながら背中から倒れ込んだ。左目から鼻にかけて大きな穴があいており、血が吹き出していた。「牛乳瓶を逆さまにしたときのような、ゴボゴボという音がした」とヒューストンは回想した。』 ☆ 5月13日 シュガーローフ前面 / 第22海兵連隊G中隊 / ジャック・ヒューストン1等兵
■ 『 左翼面では、ナッコルと同じ時期に師団に補充兵として配属された若い海兵隊員が黄燐手榴弾を斜面の向こう側に投げた。ところが、日本兵がすばやくこれを投げ返してきたため、鮮やかな煙を出して爆発し、若い海兵隊員は溶解した黄燐をシャワーのように体中に浴びてしまった。彼の皮膚はとけて焼け落ち「誰か俺を殺してくれ!」と絶叫しながら周囲に懇願したが、誰も手を下せなかった。若い海兵隊員は悶絶しながら息絶えた。』
☆ 5月14日シュガーローフ稜線 / 第22海兵連隊K中隊 / ジャック・ナッコル1等兵
■ 『 平野部は多くの死体が散乱しており、シュガーローフから地面の上を歩かずに、死体の上だけを歩いても後方まで戻れそうな惨々たる状況だった。』
☆ 5月15日朝 シュガーローフ丘麓 / 第22海兵連隊G中隊 / ウィンデル・メジャー1等兵■ 『 手榴弾は大きな弧をえがいてカーネットの機関銃に向かって飛んできたが、カーネットも同時に射撃を開始しており、手榴弾が空中を飛んでいる間に、この日本兵を斉射して切りさいた。日本兵は射殺され倒れたが、手榴弾はカーネットの足の間で炸裂した。足を見下ろしたカーネットは驚き、大きなショックを受けた。彼の右足は膝から下がなくなっていた。』 ☆ 5月15日シュガーローフ頂上 / 第22海兵連隊 / アール・カーネット1等兵
■ 『 シュガーローフの麓にあった溝に伏せていたアーブ・ゲハート1等兵からは、空を背景にした丘のシルエットが見えていた。「みなが両手一杯の石を放り投げたように、いろんな物が飛びかっているのが見えた」と彼は回想した。「手榴弾や、迫撃砲弾や、それ以外にもいろんな物がとんできて、そこら中で破裂していた」用水路の中はすでに海兵隊員の死体が目一杯つまっていた。』
☆ 5月15日シュガーローフ丘麓 / 第22海兵連隊D中隊 / アーブ・ゲハート1等兵■ 『 すると突然、一人の日本兵が丘の頂上に立ち上がり、「バンザイ!」と叫んだ。(中略)日本兵は手榴弾をヘルメットに叩きつけ発火させようとしたが、明らかに不良品だったようで、ヒューズに点火するかわりに、その場で爆発して頭を吹き飛ばしてしまった。この光景を目撃した海兵隊員達は「わははは、ざまみろ!メイド・イン・ジャパン!メイド・イン・ジャパン」と大爆笑した。』 ☆ 5月15日シュガーローフ頂上 / チャールス・ミラー分隊
■ 『 俺たちが突撃したとき、死体を踏まずに丘を登るのは不可能だった。我々のもジャップのもね。そこにはたくさんの男たちがいたけど、しかし様子はよくなかったよ。まるで臭い生ゴミの山を登るような感じだったからね。』 ☆ 5月18日 / 第22海兵連隊D中隊 / アーブ・ゲハート1等兵
■ 『 ホーバスが日本軍の迫撃砲と手榴弾の攻撃を避けるためしゃがんでいると、彼の手前の地面でなにかがゴソゴソ動き出した。すると突然、軍刀を振りあげた日本軍の将校が起き上がり、隣の蛸壺の海兵隊員の首を背後から切り落とそうとした。「M1ライフルの弾倉がからになるまで、やつの背中に撃ち込んだよ」とホーバスは語った。』 ☆ 5月18日深夜シュガーローフ頂上 / 第22海兵連隊D中隊分隊長 / チャールス・H・ホーバス伍長
■ 『 夜の間、海兵隊員たちは誰かが彼らの正面にいるのに気がついた。(中略)音はどんどん近づいてきた。海兵隊員の一人がおぼろげな影にむけて銃を発射してみたところ、その影は倒れた。「ジャップだったんだ」とゲハートは語った。「やつの足には包帯が巻かれていた。片方の足は撃たれていたんだ。頭にも包帯が巻かれていた。そのため片方の目しか見えなかった。おまけに腕も包帯が巻かれて、三角巾でつられていた。でも彼は手榴弾を持っていた。彼は満足に歩くこともできず、足を引きずりながらやってきたんだ」彼らが聞いた音は、不自由な足を地面に引きずり、よろめきながら彼らに向かってきた音だった。のちに海兵隊員がこのときの出来事を話すさいに、この不運な亡霊の様な男を「ミイラ男」と名づけて呼んだ。』
☆ 5月19日黎明シュガーローフ頂上 / 第22海兵連隊D中隊 / アーブ・ゲハート1等兵
ここまで読んでいただいた方は複雑な気持ちになっておられるかもしれません。ご紹介したのはごく1部ですが、これらはみな1945年5月10日から19日にかけて、わずか1km四方に満たない地域で行われた戦闘での出来事です。身をもって体験した兵士達の証言こそ、戦争の「実態」を伝える唯一の手段でありましょう。
また本書にはアメリカ兵の証言として、日本軍兵士の「最期」が多く語られています。沖縄戦に限らずですが、日本軍将兵の多くは戦闘記録を残さずに戦死・玉砕あるいは自決してしまったため、現場を伝える日本軍側の証言や記録(特に証言)は極めて少ないのが実情です。生還された方々も、「敗戦」という現実に対する責任感と「生き残ってしまった」といった複雑な罪悪感・葛藤感、そしていろんな意味で“極限”であったと思われる強烈な「戦場体験」、さらには戦後を支配した反軍的風潮などにより、口を閉ざされてしまったケースが多いのではないでしょうか。
「ミイラ男」になってもなお突撃した日本兵、自らの手榴弾で呆気なく爆死してしまった日本兵・・・彼等は本書にその最期が残されているだけ、まだ「まし」なのかもしれません(涙) 敵味方関係なく、戦場において“誰の記憶にも、何の記録にも残ることなく死んでいった人々”の「心情」を想う時、ただただご冥福をお祈りし、2度とこのような事が繰り返されないことを願うばかりです。
最後に沖縄戦におけるアメリカ軍の驚異的な後方医療体制について書いておきます。
アメリカ軍負傷者の後送は迅速に実施された為、負傷兵の致死率は3%以下に抑えられました。驚くべき数字です。これを支えたのは戦場の衛生兵や後送部隊だけではなく、患者の重症度を判断し素早くグアムやハワイ(真珠湾)の病院へ送る空輸システム、さらには膨大な量の「献血」でした。アメリカ国家を挙げておこなわれた献血による血液は冷凍されてグアム経由で沖縄に空輸されており、沖縄戦のアメリカ第10軍では実に57,000リットルの血液が使われたとのことです。この膨大な量は人間1人の全血液量を仮に4リットルとすれば、なんと14,250人分の血液量に当ります。
このような国家と戦争をしていたんですね我が国は・・・。
■ シュガーローフの戦いと現在の当地の状況などはこちらのサイトで非常に詳しく知ることが出来ます。
ご興味のある方は是非見てください。→ 『 沖縄戦史 公刊戦史を写真と地図で探る「戦闘戦史」 』
■ 参考文献
『 沖縄 シュガーローフの戦い 』(ジェームス・H・ハラス 著/猿渡青児 訳 / 光人社NF文庫 )
コメント
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